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材料を「語る」言葉

Towards a metadata scheme for the description of materials – the description of microstructures

2016.07.30掲載ARTICLEPublished : 2016.07.29 / DOI : 10.1080/14686996.2016.1194166

暮らしに役立つ優れた製品を他所よりも早く設計・開発するという目標に向かって,物質・材料の微細な構造をコンピュータが扱えるように表現する共通言語の開発が進められている.

日々の暮らしを支える様々な製品に使われる物質・材料を短い期間に開発するためには,材料そのものの性質を熟知していなければならない.一見,一様に見える材料,例えばキッチンの鍋や自動車のボディを作る金属も,倍率を変えて眺めると色々な様相が見えてくる.多くは,少し拡大すると組成や強さなどの異なる2種類以上の物質(相と呼ばれる)からできている.最近の鍋で言えば,熱伝導の良い相・耐食性に優れる相・熱容量の高い相などが組み合わさっている.そして一つ一つの相は,様々な方向や大きさを持った微結晶粒子の集まりからできている.さらにそれぞれの微結晶粒子の内部には、組成が微妙に異なっている様子が見えてくる(図参照).このような材料の内部の様相は「微細組織」と呼ばれている.

材料の階層的構造例.左から右へスケールは小さくなる.(c)2016 Georg J. Schmitz, et al.

こういった様々な微細組織の特徴は個々には詳しく理解されているが,コンピュータの力を借りることによって,望む微細組織そして材料を得るためにどのような元素を組みわせ,加熱・加工すればよいか「設計」ができるようになると期待されている.実際に微細組織を「設計」するためのソフトウェアツールはすでに幾つか手に入るようになっている.しかし,微細組織・材料を特徴づける「言葉」はソフトウェアによってばらばらである.そのため材料研究者がソフトウェアから得られるデータをお互いに交換・組み合わせて活用しようとしても現状では難しい.

ドイツのアーヘン工科大学の研究センターであるアクセス(Access)の研究チームは、微細組織を研究する際のモデル化やシミュレーションに向けた「共通言語」を開発した.アクセスの主任研究者であるゲオルグ・シュミッツ氏は「我々の開発した共通言語を使えば,様々な市販或いは大学などで開発されたソフトウェアツールの間でデータのやり取りが円滑に行えるであろう」と述べ,「こういったやり取りは、一つのツールだけでは解けない問題に対して必要不可欠で,さらに実験データとの照合にも必要なものである.」と語っている.

材料の微細組織は,加工や熱処理が材料になされると変化していく.そのため製造工程とともに起こる様々な変化を表すことが必要である.本研究チームは,微細組織のシミュレーションのためのソフトウェアツールを開発しているが,様々なソフトウェーツールとの間の境目のないやり取りの必要性とその利点を特定し,あらゆる材料の3次元微細組織を表す「メタデータ記述子」を開発した.その方法を,このたびScience and Technology of Advanced Materials誌に掲載した.

メタデータとは,そのデータに関連する情報のことである.データにカテゴリーや類型化,構造化を可能とするような情報を付属させると,材料のモデル化にあたり,性質や機能,そして性能を表すために影の立役者を演じる.現在のところ,この研究チームが開発した共通言語あるいは記述子は,ある瞬間の微細組織を表すだけであるが,将来は時間と共に起こる変化を表す記述子を加えることも考えねばならないであろう.「jpegフォーマットによってデジタル画像の交換が可能となったように,我々のグループでは複雑なシミュレーションデータのやり取りを可能とするようなデータ体系を探している.」とシュミッツ氏は説明しており,「このデータ体系は材料科学技術分野で今後可能になる手法を示している.より環境負荷の小さい製造プロセス、優れた新製品に貢献する材料の開発をより速く進められるようになるだろう」と語っている.

著者Georg J. Schmitz, Bernd Böttger, Markus Apel, Janin Eiken, Gottfried Laschet, Ralph Altenfeld, Ralf Berger, Guillaume Boussinot, Alexandre Viardin
本誌リンクhttp://dx.doi.org/10.1080/14686996.2016.1194166
引用 Sci. Technol. Adv. Mater.17(2016)410.
2016.07.30掲載ARTICLEPublished : 2016.07.29 / DOI : 10.1080/14686996.2016.1194166注目の論文一覧はこちら