物質材料研究アウトルック
発行者:物質・材料研究機構
発行日:2006年版 2006年11月20日 問い合わせ: 企画調査室
第3部 物質・材料研究における今後の研究動向

第6章 信頼性・安全性を向上するための材料
  3.信頼性評価技術の新展開
    (1)ナノ−メゾ−マクロ強度解析による材料損傷メカニズムの解明
長島伸夫、早川正夫(材料信頼性センター, NIMS)
1 .はじめに

 硬さ試験は簡便で安定した結果が得られる材料試験法であり、ビッカース硬さ試験などJISなどの工業規格として採用され、製品管理や事故調査など幅広く利用されている。しかし、光学顕微鏡により圧痕サイズを測定する従来の硬さ試験機では、20μm以上の大きさの圧痕が対象となるため、1μmオーダーもしくはそれ以下の硬さは測定できない。一方、ハードディスク等の薄膜材料、あるいは半導体デバイス等の配線やマイクロマシンなど測定対象自身の微小化など、微小領域に対応した硬さ試験技術の重要性は高まっている。このような微小領域の硬さ測定を実現する方法として押し込み力−深さ(F-h)曲線を取得し、硬さを評価できる超微小押し込み試験機が開発され、薄膜材料などの均一で平坦な試料の物性評価では成果をあげている。しかし、半導体デバイスの配線やマイクロマシンなど測定対象自身が微小な場合や、鉄鋼材料(例えば0.2μmのラス、1μmのブロック等から構成されているマルテンサイト組織など)の強度解析には、押し込み試験位置を精度良く決定する機能が必要である。このため高分解能の観察機能が重要であるが、このような機能を有する超微小押し込み試験機はこれまでなかった。

 このような状況下、当グループではAFMを基にした超微小押し込み試験機を開発し、さらにSi探針による高分解能のAFM観察が可能な超微小押し込み試験機を開発した。また、硬さを統一指標として採用した材料評価技術を構築し、強度発現メカニズムの解明に取り組んでいる。



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