物質材料研究アウトルック
発行者:物質・材料研究機構
発行日:2006年版 2006年11月20日 問い合わせ: 企画調査室
第3部 物質・材料研究における今後の研究動向

第1章 物質・材料研究開発のためのナノテクノロジー
  3.新機能探索ナノシミュレーション
大野隆央、佐々木泰造、野々村禎彦、胡暁、小野寺秀博(計算科学センターー, NIMS)
1 .はじめに

 物質はナノメートルのサイズになると、大きなサイズのバルク系とは著しく異なる新奇な物性・機能を発現する可能性があり、ナノサイエンス・ナノテクノロジーは極めて高い関心を集めている。ナノスケール物質の振る舞いを実験的手段のみにより詳細に理解することは一般的に困難である。しかし、近年、実験技術の発展と計算機パワー及びシミュレーション技術の進展を背景にして、実験技術と計算技術が一点に収斂する魅力的で刺激的な状況が生まれつつある。すなわち、実験的に創成し測定できる系のサイズはナノメートル・スケールに縮小し、一方、数値解析的にモデル化できる系のサイズもナノメートル・スケールに増大しつつある。

 計算手法はその対象となる物質のサイズと現象の時間スケールに応じて、図1 に示すように分類される。電子レベルを対象とする第一原理計算、原子や分子の集団運動を扱う分子動力学法やモンテカルロ・シミュレーション、バルク材料を対象とする有限要素法や統計熱力学計算、ミクロとマクロの間を繋ぐメゾスケールを扱うPhase-field 法等である。ナノメートル・サイズの物質(ナノ物質)やナノ複合体の構造と物性を理解し新奇な機能を探索するためには、各階層の計算手法を高度化し連携したナノシミュレーション技術の開発が重要である。以下、鍵となるシミュレーション手法の現状と展望について概説する。



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