物質材料研究アウトルック
発行者:物質・材料研究機構
発行日:2005年版 2005年11月1日 問い合わせ: 企画調査室
第4部 物質・材料研究の今後の展望

第15章 新物質創製技術
      2.真空プロセス応用技術
土佐 正弘 (材料研究所 微小造形グループ, NIMS)
1) はじめに ―世界の動向

 物質を構成する原子の配列や構造を設計図に基づいて単原子レベルで制御して新材料を創製することは材料を開発する究極のプロセスの一つであろう。このような単原子分子レベルで材料を取り扱うためには同レベルでの汚染となる気体分子の吸着を極力排除しなければならない。そこで、1mm3中に数個〜数十個程度しか気体分子が存在しない極高真空(10−10 Pa以下の雰囲気圧力環境)を利用することにより表面吸着による汚染は単原子サイズでも無視できる超清浄極限環境となる。さらに、この超清浄空間である極高真空中で試料基板表面の超清浄化、成膜、加工、特性分析、性能評価等すべての多段操作を連続的に行う極高真空一貫プロセスを構築することにより、原子・分子レベルでの新物質創製に資する材料開発プロセスの実現が期待される。

 しかしながら、このような大型真空プロセスには超清浄な真空雰囲気を劣化させるガス放出源が多数存在し、おもに真空容器壁系、真空計電子源フィラメント系、真空排気系などがあげられるが、特に、メートル単位の基板搬送系では、真空環境特有の摩擦・摩耗の増大によりガス放出のみならず微粒子等のダスト発生や最悪の場合には摩擦増大による駆動機構の焼き付けによる動作不能に陥る場合がある。

 そこで、この超清浄空間を汚染しうる摺動駆動時の摩擦現象を排除するために、長距離高速輸送を行う必要のある基板搬送系では無接触で摺動が伴わない浮上搬送システムの開発が必要不可欠となる。

 ここでは、超清浄空間としての極高真空を原子レベルでの材料開発プロセスとして実現するNIMSでこれまで行ってきた磁気浮上型極高真空一貫プロセスの構築に関する研究を主体として紹介したい。



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