物質材料研究アウトルック
発行者:物質・材料研究機構
発行日:2005年版 2005年11月1日 問い合わせ: 企画調査室
第4部 物質・材料研究の今後の展望

第13章 強磁場発生技術とその応用
      1.強磁場NMRの普及と開発動向
清水 禎 (強磁場研究センター 磁場科学グループ, NIMS)
1) はじめに

 ナノ・バイオに貢献が期待されている様々な分析技術の中でも特に国の研究機関として取り組むべきものは、軌道放射光、高圧電子顕微鏡、強磁場NMR、中性子回折等々の大型特殊装置である。それぞれに異なる特徴を持ち、お互いに相補的なこれらの分析技術が全部揃うことによって初めてナノ・バイオの分析は完結する。

 軌道放射光、高圧電顕、中性子回折については既に有効性が周知となっている。強磁場NMRの有効性は、非晶質物質や混合物等の他の分析技術が苦手とする物質においても、局所的な3次元化学構造(分子の幾何学的構造、化学結合の種類と大きさ)を解明できる点にある。ナノ・バイオ分野の中でも特に触媒、ガラス、スラグ、燃料電池、太陽電池、生体物質、等々の重要課題には、強磁場NMRが解決できる課題が多く存在する。

 NMRは原理的に非晶質物質や混合物等の分析に有利であることが当初から知られている。しかし従来のNMRでは、磁場が低かったために、その有効性が有機物など一部の物質だけに限定的であった。20テスラ(T)以上の磁場が利用可能になるとNMRの有効性は飛躍的に拡大する。本来NMRは周期律表の約90%の元素に対して分析可能であるにもかかわらず、従来は磁場が低かったために水素や炭素など3元素しか分析対象にできなかった。



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