注目の論文

グラフェンを超える二次元材料を求めて

C, Si, Geを基とするIV族グラフェン類似体を化学修飾で作製する

2018.02.14掲載REVIEW ARTICLEPublished : 2018.01.31 / DOI : 10.1080/14686996.2017.1422224

2004年にA. GeimとK. Novoselovがグラフェンを発見し、その研究が世界的に急拡大する一方で、エレクトロニクス、スピントロニクス分野への応用を目指し、多くの科学者が、グラフェンを超える材料として、炭素と同じIV族元素のケイ素、ゲルマニウムからなる二次元材料:シリセン(silicene)、ゲルマネン(germanene)の合成を試みてきた。しかし、ケイ素モノマーの重合による結晶性二次元ケイ素材料合成の試みはオリゴシランのアモルファス膜生成にとどまり、期待するような成果を得られていない。また、基板状にシリセンを成長させトランジスタを試作する等、多くの進展はみられるものの、大気中のシリセンは不安定で、デバイスを作製するための自立した(freestanding)シリセン、ゲルマネンを作製するまでにはいたっていない。
グラフェンはすでに良く知られているように、グラファイト結晶を構成する炭素のハニカム格子一層を自立する形で取り出したものである。金属ないしは化合物基板上のグラファイト単層薄膜は比較的早くから合成され、研究もされていたが、A. GeimとK. Novose-lovがグラファイトからの機械的剥離により自立したグラフェンを取り出し、その物性を測定することに成功してからグラフェン研究は爆発的に拡大した。グラフェンは、面内では炭素同士がダイアモンド以上の強い結合を持つために非常に高い強度を持つ。また、電気伝導度も驚くほど高い値を示す。しかし、グラフェンは半導体的なバンドギャップを持たず、したがって、エレクトロニクス分野への応用は難しい。そのため多くの科学者が、半導体特性を持つグラフェンを超える二次元材料の探索に注力している。”beyond graphene”で検索すると多くのジャーナルで、すでにグラフェンを超える二次元材料についての特集を行ってきているのがわかる。

Science and Technology of Advanced Materialsに、豊田中央研究所の中野秀之他の発表したレビュー論文 Chemical modification of group IV graphene analogs は、そのなかで、グラフェン、シリセン、ゲルマネンの弱点を補うことの期待できるグラフェン量子ドット(GQD)、シリカン(silicane)、ゲルマナン(germanane)などのIV族グラフェン類似体と、それらに側鎖を付加することによる機能化にしぼって解説している。中でもグラフェン量子ドットに焦点をあてている。
GQDの合成には大きなグラフェンシートを切り分けて作るトップダウン方式と、芳香族前駆体の脱水素反応でつくるボトムアップ方式とがある。トップダウンには多彩な方式があり、GQDを大量に作製できることから、単層GQDを作製するにはこの方式が一般に用いられる。ボトムアップ方式では単層GQDは有機前駆体分子を脱水素処理することにより作製するのが一般的である。ただ、いずれにしても単層GQDを作製するのは容易でない。GQDのサイズは作製法によりまちまちであるが、概ね3 ~ 20nmの範囲内であり、厚さは単層から数層で、5nmより薄い。形状は円形、長円形、六角形などのシート状である。トップダウンで作製されたGQDはsp2ドメインの生成と酸素グループ基の吸着により中心光が420 - 450 nmの青色発光を通常示す。さらに窒素を含む分子グループを吸着させると吸着分子に依存して、色を変化させることができ、LEDや光検出器への応用が期待できる。実際、いくつかの研究グループがGQDを用いたテスト用の光検出器の作製に成功している。また、GQDは色素増感太陽電池の性能を向上させることも示されている。
研究者達はまたケイ素、ゲルマニウムのグラフェン類似体であるシリセン、ゲルマネン、さらにはそれらを水素化したシリカン、ゲルマナンなどを対象として、作製法、結晶構造、層の厚さ、添加分子などのファクターが、今後、これらをエレクトロニクスやフォトニック素子材料として開発してゆく時にどのような効果を及ぼすかを研究している。今のところ自立したシリセン、ゲルマネンは作製できておらず、分子を付加することが不可欠である。そのように表面修飾されたGQD、シリカン、ゲルマナン等の材料は、理論的に予測された自立単原子層のグラフェン、シリセン、ゲルマネンといった二次元材料と大変良く似たものになっている。著者達は、したがって、このようなIV族グラフェン類似体の表面を改変した材料の性質を理解することは、今後のナノ材料開発のための良い出発点となり得るとしている。さらに、これらのIV族グラフェン類似体のオンデマンド分子設計、表面修飾の制御がキー・プロセスとなって、近々、エレクトロニクス素子、エネルギー貯蔵材料への応用開発が進むことに期待している。

図1:グラフェン、シリセン、ゲルマネン研究の年代順展開

著者Hideyuki Nakano, Hiroyuki Tetsuka, Michelle J. S. Spencer and Tetsuya Morishita
本誌リンクhttp://dx.doi.org/10.1080/14686996.2017.1422224
引用 Sci. Technol. Adv. Mater.19(2018)76.
2018.02.14掲載REVIEW ARTICLEPublished : 2018.01.31 / DOI : 10.1080/14686996.2017.1422224注目の論文一覧はこちら