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酸分解性ポリロタキサンによるコレステロール代謝の改善

Improving cholesterol metabolism by acid-labile polyrotaxanes

2016.07.30掲載ARTICLEPublished : 2016.07.26 / DOI : 10.1080/14686996.2016.1200948

ニーマンピック病C型(NPC病)は,リソソーム膜に局在するコレステロール輸送タンパク質の変異によって起こる先天的代謝疾患であり,神経変性などの重篤な病態を示す.NPC病患者細胞のリソソームにはコレステロールが蓄積することが知られており,この改善が治療の緒になると考えられている.近年,β-シクロデキストリン誘導体がNPC病コレステロール蓄積を改善することが明らかにされ,NPC病に対する治療薬としてその利用が有望視されている.

Science and Technology of Advanced MaterialsのNanomedicine Molecular Science特集に発表された田村篤志,西田 慶,由井伸彦(東京医科歯科大学)による論文 Lysosomal pH-inducible supramolecular dissociation of polyrotaxanes possessing acid-labile N-triphenylmethyl end groups and their therapeutic potential for Niemann-Pick type C diseaseは,細胞のリソソームにおける酸性pHに対して分解応答を示すポリロタキサンの設計と,NPC病治療への応用に関する基礎的検討について報告している(図1).インターロック構造のポリロタキサンは細胞内のリソソームで分解することで,局所的にβ-シクロデキストリンを放出し,コレステロールの蓄積をより効果的に改善すると提唱している.

図1.酸分解性ポリロタキサンとリソソームpHに応答した分解挙動のイメージ図

彼らは,N-トリフェニルメチル基をポリロタキサン合成のための封鎖基として利用した.N-トリフェニルメチル基で封鎖したポリロタキサンは弱アルカリ性~中性pHで長時間安定であったが,pH 6以下の弱酸性pHではN-トリフェニルメチル基の脱離が起こり,ポリロタキサン中の環状分子(β-シクロデキストリン)が放出されることを明らかにした.

このようにして合成したポリロタキサンを用いて,ニーマンピック病C型由来細胞におけるコレステロール蓄積への影響を評価している.ポリロタキサンは現在臨床応用が進められているヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンの約100~10分の1の濃度でNPC病由来細胞におけるコレステロール蓄積を改善することを明らかにした.また,彼らは,NPC病治療に有用なポリロタキサンの分子パラメーターに関しても論じている.ポリロタキサンを用いた本コンセプトはシクロデキストリンの医薬品応用にブレークスルーをもたらすと期待される.

著者Atsushi Tamura, Kei Nishida, Nobuhiko Yui
本誌リンクhttp://dx.doi.org/10.1080/14686996.2016.1200948
引用 Sci. Technol. Adv. Mater.17(2016)361.
2016.07.30掲載ARTICLEPublished : 2016.07.26 / DOI : 10.1080/14686996.2016.1200948 注目の論文一覧はこちら